関節治療センター

地域の皆様に関節疾患・治療に関する正確な情報と安全・安心で質の高い関節治療をご提供し、健康寿命の延伸に貢献することを目的とし、2019年4月1日より関節治療センターを開設しました。

センター長メッセージ

この度、愛媛大学関節機能再建学講座 准教授と南松山病院・関節治療センター長を兼任させていただく事になりました。関節機能再建学講座は愛媛大学医学部整形外科を母体にした大学院の教室で、主に四肢の関節外科を担当し、愛媛大学人工関節センターとともに臨床、教育、研究・開発を行っています。

愛媛大学人工関節センターでは年間300例を超える人工関節置換術のほかに、高位脛骨骨切り術、関節鏡視下手術(前十字靭帯再建術、半月板治療等)など多くの手術的治療を実施しております。

人工関節治療では日常生活動作が飛躍的に改善し、できないと諦めていた農作業や趣味のゴルフを再開できるようになるなど患者さんからは「人生が変わった」との喜びの声を多く頂いています。しかし、大学手術枠の都合にて需要に十分対応できず、手術を待機して頂かなければならない状況でした。地域の皆様に関節疾患・治療に関する正確な情報と安全・安心で質の高い関節治療を提供し、早期スポーツ復帰、健康寿命の延伸に貢献することを目的に、2019年4月に愛媛大学附属病院と連携して南松山病院・関節治療センターが開設され、患者さんの希望のタイミングでの手術にお応えできるようになりました。膝関節痛やスポーツ障害にお困りの患者さんは、悩まず、放置せず、まずは診察を受けて頂きたいと思います。また、膝関節の治療はどのステージにおいても運動による筋力アップと可動域訓練が非常に大事だということも忘れないでください。しっかり膝をケアして、健康寿命をのばし、膝痛のない人生を楽しんでください。

愛媛大学医学部附属病院 人工関節センターと同水準の治療をご提供致します。

関節治療センター  センター長   日野 和典

関節治療センターの特長

充実した医療スタッフと安心できる総合診療体制

関節治療センターでは3人の専門医師を中心に診療を担当しています。いずれも人工関節の専門教育を受けた経験豊富な医師です。人工関節手術を受ける患者様は高年齢や生活習慣病など治療中の内科的疾患をもっておられる方も多くおられます。当院では充実した内科・外科部門があります。手術前の全身スクリーニング検査(胸部レントゲン、心電図、血液検査)で異常が見つかったり、手術後に何らかの全身的異常が生じた場合も、それらの専門医師と共同で検査・治療にあたることができます。

NASA規格「クラス100」のバイオクリーン手術室

人工関節手術はあらゆる外科手術の中で最も高い清潔度が要求される手術です。術後感染症(バイ菌が入って膿んでしまうこと)を予防するためいろいろな対策がとられています。

当センターでは人工関節に適した清潔度の高いバイオクリーンルーム、手術をする医師の宇宙服のような手術用着衣など様々な感染予防対策を施しています。

充実したリハビリテーション

人工関節手術には適切なリハビリテーションが必要です。当院は愛媛県下有数のリハビリテーション施設(理学療法士22名、作業療法士13名)を誇り、専門スタッフが術前・後のリハビリを担当します。
当院では回復期リハビリ病棟を有しています。手術前にあまり歩いていなかった方は回復が少し遅れる場合もあります。そのような方は回復期病棟に転棟して頂きリハビリを継続することができます。

愛媛大学医学部付属病院との連携

当院では、愛媛大学医学部附属病院の人工関節センターと連携しています。

PFC-FD™(PRP-FD)療法とは

PFC-FD™(PRP-FD)療法とは、ご自身の血液中の血小板に含まれる成長因子を特殊な技術で取り出し、患部に注入するバイオセラピーです。この成長因子を利用して、もともと備わる自己治癒力を一時的に高め、組織の修復や炎症抑制、痛みの改善を目指した治療です。保存治療では十分な効果がないが手術を行うのはためらわれる方など、既存の保存治療と外科治療の間を埋め合わせる可能性のある治療として位置づけられます。

※PFC-FD™は、血小板の力を活用する治療法であり、血小板由来成長因子濃縮液を凍結乾燥保存したものの商品名・サービス名となります。

血液中の血小板を活用したバイオセラピーには、PRP療法がヨーロッパやアメリカを中心に以前より広く行われています。日本でも整形外科領域の中でスポーツ選手の傷害や関節の痛み対する使用が増えてきており、最近ではみなさんも耳にされる機会が多くなってきていると思います。
PRPとは、Platelet-Rich Plasmaを略した名称です。日本語では多血小板血漿と呼ばれていて、自己血液を遠心分離して得られる血小板が多量に含まれた液体(多血小板血漿)のことを言います。血小板は、血管が損傷した際に集まってきて止血をするのですが、その際に多量の成長因子を放出します。PRP療法とはこの成長因子の作用を利用した治療法です。また、100%自己血液を利用するため、アレルギー反応などの副作用リスクが少ない治療法です。

PFC-FD™は日本語では血小板由来因子濃縮物-フリーズドライ化と呼ばれます。
遠心分離し作製したPRPをさらに活性化させ、血小板に含まれる成長因子だけを抽出、無細胞化した上で濃縮させます。これをフリーズドライ加工することにより、成長因子の総量がPRPの約2倍含まれ、約6か月間の長期保存も可能となっています。さらに白血球などの炎症を引き起こす細胞成分を除去している為、従来のPRPと比べて治療直後のはれや痛みがより少ないことが期待されます。

  • → こんな方におすすめ
  • 入院が困難な方、持病や高齢により手術が難しい方
  • 手術を勧められているが、別の治療法を検討されている方
  • ヒアルロン酸などの注射で効果を感じていない方や来院頻度を減らしたい方

PFC-FD™療法の適応

一般的には変形性膝関節症や変形性股関節症、靭帯損傷、テニス肘、アキレス腱付着部症などに対する適応が考えられていますが、当院では主に変形性膝関節症を対象としています。

  • 変形性膝関節症でお悩みの方
  • 関節炎と診断されて、様々な治療を試している方
  • 階段の上り下りで膝に負担がかかる方
  • ひざに違和感があるが、同じ治療法を続けて効果が得られない方
  • スポーツで関節を痛めた方
  • 手術に抵抗感がある方

PFC-FD™療法は保険外診療の治療になります。変形が強い方や下肢のアライメントに問題がある方など、手術療法を優先した方が良いと思われる方にはPFC-FD™療法より手術療法をお勧めさせて頂く場合があります。
患者様の状態やご希望など踏まえて判断しますのでご相談下さい。

PFC-FD™のメリット

組織の修復を促す成長因子がPRP療法の2倍になる事がわかっています。
フリーズドライ加工なので、成長因子の濃度が経時的に低下することなく6か月間保管可能です。
自己血液を使用するため、副作用が少なく安全性が高いです。
関節腔内注射のため外来で簡便に行えます。
回数制限はなく何回でも行うことが可能です。

PFC-FD™のデメリット

自己治癒力を活性化するため、注射後数日は腫れや痛みが出現することがありますが、自然に消失します。
新しい治療で保険適応外の為、治療が高額になります。
自己の成長因子を用いるため、治療効果には個人差があります。
新しい治療のため、まだ完全に確立された治療ではなく、これまでの報告では約60~70%のResponder Rateが報告されていますが、効果の程度や効果持続期間は個々の症例によって異なります。

このような方は、PFC-FD™療法を実施できない場合があります。

  • がんと診断を受けたことがある
  • 抗がん剤、生物学的製剤または免疫抑制剤を使用している
  • 患部に細菌感染を伴っている
  • 心疾患、肺疾患、肝疾患、腎疾患、出血傾向、血液疾患、コントロール不良な糖尿病および高血圧症等を有する
  • 薬剤過敏症の既往歴がある
  • 血液感染症を患っている
  • 血液検査の結果、血小板数の異常がある
  • ステロイド剤を服用している
  • 1カ月以内にPRP療法を受けた

PFC-FD™治療の流れ

治療の流れ
  • 1. 治療の方法
    • 血液を49mL、静脈より採取します。
    • セルソース株式会社に血液を搬送し、PFC-FDを作製します。
    • PFC-FDの作製には、3週間を要します。
    • PFC-FDを注入します。
  • 2. 1回目(保険診療)
    • 診察にて、お身体の症状やPFC-FDの治療についてご説明します。
    • PFC-FD療法の適応があるか、医師が判断します。
    • 2回目の採血実施日を決めます。
    • 実施する場合の費用やお支払い方法についてご説明します。
  • 3. 2回目(自費)
    • 署名頂いた同意書をお預かりします。
    • 採血します。
    • 会計をします。
  • 4. 3回目(自費)
    • PFC-FD療法の実施希望について、最終確認をします。
    • 感染症をクリアしてフリーズドライ化したPFC-FDを注射します。
    • 実施後の注意事項をご説明します。
  • 5. 4回目以降(保険診療)
    • リハビリテーションを実施します。
    • 経過を確認する為に、定期的な診察をおこないます。
  • 治療後の注意点
    • 痛みを感じている間に、安静にし過ぎてしまうと、治療部位が硬くなり長期的な痛みの元になる可能性があります。可能な限り、治療後に継続的なリハビリテーションが必須です。
    • 注入部位は翌日から浴槽につけていただいて大丈夫です。
    • 注入後、数日間は血流の良くなる活動(長時間の入浴、サウナ、運動、飲酒など)を行うことで、治療に伴う痛みが強くなることがありますが、この痛みが強くなったからと言って、治療効果に差はありません。
    • 関節は細菌に弱いので、注入部は清潔に保つよう心がけてください。

PFC-FD™作製にあたりご理解ください

  • PFC-FDは感染症検査(HIV、HBV、HCV、梅毒、HTLV-1)で「陰性」の方のみ提供が可能です。
    血液検査の結果加工作業ができないとなった場合は血液検査代金のみご負担をお願いいたします。
    ※採血の日に全額お預かりし、血液検査後に差額分を返金致します。
  • 血液を採取して、PFC-FDを注入するまでの間に、治療を中止することも可能です。
    (ただし、PFC-FDオーダー後は、注入されなかった場合でも返金は致しかねます。)
  • 上記において、「陽性」であった場合、他の医療機関で検査をご希望された場合、医師が作成する紹介状をもって、受診して頂けます。
  • 他の医療機関で「陰性」と判定された場合、1カ月以内であれば加工作業・注入は可能です。
  • 悪性腫瘍を患っている方はお受けいただけません。
  • 体調の良くない場合や、血液の状態によっては、ごく稀に作製が出来ない場合もあります。
    その際には再度採血をお願いする場合があります。
  • 医療機関から血液輸送時に破損した場合、再度採血をしていただく必要があります。
  • 保存期間を過ぎた場合は破棄させていただきます。(保存期間は半年です。)

費用について

部位 費用
採血・検査 15,000円
作成・注入 片膝 117,000円
合計 132,000円
※ 採血日(採血前)に上記の合計費用132,000円をお支払いいただきます。
検査結果が陽性となり治療ができない場合は、検査代金15,000円を負担していただき、残りの117,000円を返金いたします。
※ 尚、加工施設に到着し受付処理なされた場合は、いかなる事由においても返金できません。

*医療費控除を受けることができます。
1年間(1月1日~12月31日まで)に支払った医療費が10万円を超える世帯(生計が同一のご家族)は、確定申告で申告し、還付金を受け取る事が出来ます。制度のご利用を予定されている方は、医療費の支出を証明する書類(領収書など)が必要です。治療費の領収書を発行致しますので大切に保管してください。

PFC-FD療法とは
PFC-FD™は、セルソース株式会社の提供する商標です。

医師プロフィール

  • 日野 和典

    准教授

    愛媛大学

    診療内容
    膝関節外科、スポーツ障害など
    専門分野
    人工関節、靭帯再建術、関節鏡手術
    認定資格
    愛媛大学 関節機能再建学 准教授
    日本整形外科学会専門医
    日本人工関節学会認定医
    <HPはこちら>
    関節鏡技術認定医
    <HPはこちら>
    日本スポーツ協会公認スポーツドクター
    日本人工関節学会 評議員
    日本膝関節学会 評議員
    日本スポーツ整形外科学会 評議員

    年間約300症例を超える膝関節手術を執刀するスポーツ、膝関節専門医。
    愛媛FC、愛媛FCレディース、FC今治などのハイレベルスポーツ選手の膝関節治療も担当。
    最先端の手術理論と技術を取り入れ、低侵襲で痛みが少なく、術後機能を最大限に引き出す治療を心掛けております。

    愛媛大学医学部附属病院 人工関節センター所属
    <HPはこちら>

    人工関節ドットコムにインタビュー記事が掲載されました。
    <該当記事はこちら>

    女性セブンにて「最強の膝の名医」として紹介されました。
    <該当記事はこちら>
  • 亀井 節也

    診療内容
    外傷一般、骨軟部腫瘍など
    専門分野
    骨軟部腫瘍外科
    膝・股関節  スポーツ外傷
    外傷一般
    認定資格
    日本整形外科学会専門医
  • 渡森 一光

    専門分野
    膝関節疾患、手の外科、外傷